世の全てのピアノ曲の中でも最高峰といわれている「ハンマークラビア」がようやく「まーいいでしょう」ということになりました。 ほぼ7ヶ月かかりましたね。 こんなにかかったのはmidiの打ち込みを始めた頃ぐらいでしょうか。 ともあれ40分以上の曲はベートーベンのピアノソナタの中でも飛び抜けて長い曲です。 その上、展開が複雑ですし、ピアノを弾く技術から見ても相当なもんだと思いました。 midiを打ち込んでいても、ここは左右五本ずつしかない指で一体どう弾くんだろうというところがいくつも出てくるんですよ。 このあたりのことは、コンピュータによる「正確」な打ち込みでは醸し出せない人間くささが出てくるんじゃないかな。 当時ベートーベンは「50年もすれば弾ける人間が出てくるんじゃないか」と言ったとか。 そんなわけで、コンサートなどではなかなかお目にかからないのもうなずけますね。 これを弾ききるには技術レバルの高さもさることながら、相当な緊張感の持続が要求されると思うんです。 ですから「いつかは」と思っているピアニストも多いことだと思います。
特に時間がかかったのは第三楽章と四楽章でした。 ベートーベンのピアノソナタの中では一番素晴らしいいわれている第三楽章の美しいAdagioは「一つ一つの音や全体の構造をどう表現するか」が課題になりました。 また、第四楽章ではその序奏部分のLargoやAllegroの小節線のない記譜方法に戸惑い、その後の「三声のFugaの追いかけ方」が課題になりました。 めまぐるしく展開してゆく流れを追いかけてゆくうちに、ハテどこに行き着くんだろうと迷ってしまう場面が何度も出てきました。 殆ど耳が聞こえなくなっているはずなのに、こんな複雑な音の設計が出来るなんてベートーベンの頭の中は一体どうなってたんでしょうね。 でも、ようやく長年目標としてきハンマークラビアの打ち込みが、なんとか仕上がって嬉しい限りです。 只、取りあえずの「まーいいでしょう」ですから時折見返しながら手を入れてゆきたいと思っております。
尚、ベートーベンのピアノソナタの歴史はピアノの歴史とも言われるぐらいにその時代時代の先端の機種が使われていたようです。 つまりピアノメーカーがベートーベンの注文によってそれぞれ改良を重ねていったようです。 中でもハンマークラビアの作曲では低音域が拡張された(F1→C1)、ブロードウッドのピアノが第三楽章、第四楽章から使われ、そして後期の30,31,32番に繋がっていったということのようですね。
そういうわけで、ベートーベンのピアノソナタを現代のピアノでオリジナルに近い楽譜どおりに弾くと、音が濁ったり響きすぎたりしてしまう曲もあるようです。 一方ベートーベンが出したくても果たせなかった音が現代のピノでは容易に弾けることもあると思います。 ここでもいくつかのピアノソナタについては先生のサジェスチョンを頂いて、ベートーベンの思いを忖度し低音部を下げて打ち込んでおります。(29番はそのままですが)
曲名:Piano Sonata No. 29 in B-flat major OP.101 “Hammerklavier”
音源:Vienna Synchron Concert D-274
Audio file format:mp3
YouTube:Piano Sonata No.29