音源-6 ピアノ音源比較(1)

 さて、今回バッハのゴールドベルグ変奏曲、アリアを打ち込んでいる際にアタックの強さが気になるという我が師のコメントがありました。 嘗てベートーベンのピアノソナタを打ち込んでいる時も時折そのコメントがあり、色々対処してみたんですが、どうもうまい手が見つかりませんでした。 今回ダイナミックにあまり大きな変化のない曲でしたので各小節の頭で特に目立ったんだと思います。

 実はピアノの弾き方(タッチの違い)によって同じ音でも音質が異なります。 良く指を立てて弾いたり、指の腹で弾いたり、鍵盤の奥の方を叩いたり等々ピアニストは工夫をして音作りをしているんですね。 強弱以外のニュアンスの違いを何とか表現する工夫だと思います。

 残念ながら手持ちの音源にはそこまでの機能はありません。 ベロシティーの調整やハーフペダルやダンパーペダルを使ってなんとか似た音を出そうと色々やってみたんですが、どうも上手く表現できませんでした。 FAZIOLIには、四本ペダルが付いているモデルがあり、その役割を担いそうですね。 最近VSLからこのモデルをシュミレートした音源、Synchron Fazioli_F308が発売されまして、またしてもほしくなってきてしまいますね。

 さて、今回”アリア”を使って、現在使っているピアノ音源(VSL社の”Vienna Synchron Concert D-274”)以外に新たにバージョンアップしたModartt社の物理音源、Pianoteq8、Synthogy社のサンプリング音源、Ivory3とで比較してみました。 ピアノはすべてSteinway & Sonsのフラッグシップモデル D-274(Humburug)からサンプリングまたはモデリングしているものを使いました。 全く同じ条件で比較すると、このアリアの場合はPianoteq8>Ivory3>Synchron D-274の順で音どうしの繋がり、強弱へのスムーズな反応、ポリフォニーの聞こえ方が良いことが判りました。

 調べてみると、どうやらSynchronは幾つかのベロシティーレイヤー毎にサンプリングした音を繋げているのに比べてPianoteqは全て一つずつ計算で音出しをしていること、Ivory3はその中間でそれぞれのレイヤーでサンプリングした音と音との間を計算で補っているといったことで、音の繋がりのスムーズさに違いがでてきているようです。

 また、Pinoteqのマイクの位置、向き、数に対するレスポンスはなかなかのものがあります。 計算でこれらを作り出しているのですから本当に感心します。 特にバイノーラルの設定にするとピアノの椅子に座って弾きながら音を聴いているようで、音がスポンスポンと抜けるような気持ちよさがあり、不思議な感覚でした。 コンサート会場での音楽鑑賞では無い設定ですので、今回のアリアでは3マイク設定にしてます。

 さて、気になるアタックについてですがPinoteqとIvory3にはハンマーの堅さが調節できる機能が用意されております。 いくつか試してみたんですが、どうやらこれによって今までの懸案であったアタックの強さのコントロールが出来そうですね。