実はベートーベンのピアノソナタ8番「悲愴」を打ち込んでいてなかなか上手くいかなかったとろがあります。 それが冒頭の和音から続いて出てくる「fp」の処理についてです。
ピアノソナタ8番は1797年-1798年に掛けて作曲されており、使われていたピアノはウイーンのアントン・ワルター製と言われております。
引用 民音音楽博物館
現在のダンパーに当たる機能は、足でペダルを踏むのではなく膝を使って鍵盤の下にあるレバーを押し上げる仕組みだったそうです。 只、音の持続はさほどではなく、レバーを戻せば直ぐに減衰したのでこの楽譜冒頭の弾き方としてはあまり問題なく出来たのではないかと予想されます。
さて、現代のピアノとなりますと音の強さや共鳴音の持続、ペダル類の機能等々、当時のものとは比較にならない高性能で更に安定しております。 そういうピアノでこの「fp」を弾かなくてはならないわけです。 ピアノは減衰楽器ですから一度叩いてしまうと減衰曲線に従って音が小さくなってゆくのが当たり前ですね。 ですから巨匠ベートーベンの指示を現代のピアノでどう表現するかが課題になります。 イメージとしてはダーンと弾かれた強い和音「f」が急速に「p」まで減衰して次につながる・・・ということでしょうか。
たまたま我が師が紹介してくれたバレンボイムのマスターコースのレッスン風景を食い入るように見て判ったことがあります。 彼は次のように弾いております(ようです)。 因みに、このときマスターコースで指導を受けていた方はこの技術が出来なく、何度も直されてましたね。
先ず強烈な和音「f」(最初のダーン)を弾く
→直ちに落とした手を鍵盤から持ち上げてしまう(その際ペダルは踏んだまま)
→その直後、同じ鍵盤を軽く押さえ直す(多分音があまり鳴らない程度で、共鳴を狙う)
→次の音「p」の前でペダルを離す
これをDAWソフトで実現するのは、このベバレンボイムのアクションをシュミレートすればいいわけで、さほど難しくないんじゃないかと思いました。 つまり、普通はボリウム(CC 7)は動かさずベロシティーで音量をコントロールしてますが、今回は「f」を打ちこんでから、かなり鋭くボリウムを落とます。 そして次の「p」でボリウムを通常の値に戻し、それなりのベロシティーを打ち込めば出来ると思いました。 その間ペダルは踏みっぱなしで「p」の前で離す。 どうでしょうか。 この微妙な違いが大事なようですね。
「fp」の打ち込み
「fp」の処理なし