さていよいよ、「月光」です。 この「月光」という表題は第一楽章については頷けますがそれ以外は全くその印象からかけ離れた曲ですね。 もっともこの表題は巨匠が付けたものではありませんから当然でしょう。 只、第一楽章はあまりにも有名で誰でも頭に浮かぶメロディーです。 そのためついつい躊躇して、最初は打ち込みから外して進めてきました。 でも今年の元旦にベートーベンのピアノソナタをやるのならやっぱり避けて通れないな・・・と思い直して改めて取り組んでみることにしました。
ざっと打ち込んでみての難しさは第一楽章<第二楽章<第三楽章といったところでしょうか。 第一楽章は初心者でも弾こうと思えば出来るとはいわれておりますが、聞ける音楽となると全く違いますね。 まともに曲ずくりに取り組んでみてこの第一楽章でさえ難しさが身にしみてきました。 それは冒頭に示されている巨匠の指示”Si deve suonare tutto questo pezzo delicatissimamente e senza sordino.”から始まるんですね。 「全曲を通して可能な限り繊細に、そしてsordinoを使用せずに演奏する」とあります。 当時のピアノと現代のピアノは音の性格がかなり違いますから、ペダルの踏み方からして考えなければならないわけですね。 その上ソプラノとバスを支えるために全体に流れる三連符の扱いが特に肝になってくると思いました。
ソナタ形式を取らずに流れ出した第一楽章が途切れることなくアタッカで軽快な第二楽章に繋がり、とうとう三楽章では”Presto Agitato(激しく急速に)”とまで指定された激しい楽章へと展開してゆきます。 こうなると、もはや当初の「月光」のイメージからは遠く離れてきてます。 そして最後のコーダで巨匠のかなり激しい主張が纏められているようにも思いました。 もっとも、「湖面に映る月の光」・・・といったイメージを表現するために書かれた曲ではないですから、第一楽章だけで聞くのを止めず、是非最後の三楽章まで聴いてみてください。 耳が不自由になってきてしまった巨匠の「心の内の表出」だと、感じることがきっとできると思います。
曲名:Piano Sonata No.14 in C-sharp minor Op. 27, No.2
音源:Ivory3
Audio file format:mp3(PCで直接聞かれる方はご参照ください)
YouTube: Beethoben Piano Sonata No.14