楽譜はどこまで音楽になるか — NotePerformerと現代ストリング音源 Part 3

NotePerformerと他のストリング音源 — 何が違うのか

ここまで、NotePerformerの仕組みや考え方について見てきました。

では実際の制作の現場において、他のストリング音源と比べた場合、何がどのように違うのでしょうか。

この点を整理してみたいと思います。

ストリング音源の大まかな分類

現在使われているストリング音源は、大きく次の三つの方向に分けて考えることができます。

  • サンプリング系(MSS / TSS / LASS など)
  • モデリング系(SCES / SWAM など)
  • 楽譜解釈系(NotePerformer)

それぞれは「音楽をどこで作るか」という点において、明確に異なるアプローチを取っています。

サンプリング系音源

MSSやTSS、LASSに代表されるサンプリング系音源は、録音された音をベースにしています。

これらはMIDI情報をもとに再生されるため、

  • タイミング
  • ダイナミクス
  • アーティキュレーション

といった要素を、ユーザー自身が細かく調整する必要があります。

近年では自動化の機能も進んでいますが、基本的には「演奏を作り込む」タイプの音源と言えるでしょう。

モデリング系音源

SCESやSWAMに代表されるモデリング系音源は、音をリアルタイムに生成します。

そのため、

  • ビブラート
  • ボウイング
  • 音の立ち上がり

といった要素を連続的に制御することができ、非常に高い表現力を持っています。

一方で、その分だけ「演奏する」ことが求められます。

つまり、音源というよりも「楽器に近い存在」と言えるでしょう。

NotePerformerの立ち位置

これに対してNotePerformerは、これらとは異なる位置にあります。

MIDIを細かく調整するわけでもなく、リアルタイムで演奏するわけでもありません。

代わりに、楽譜そのものを解析し、そこから音楽を構築します。

言い換えれば、

  • サンプリング系 → 演奏を作る
  • モデリング系 → 音を作る
  • NotePerformer → 音楽を解釈する

という違いになります。

lookaheadの役割の違い

ここで重要になるのが、lookaheadの役割です。

一見すると同じ「先読み」という機能でも、その意味は音源によって大きく異なります。

例えば、

  • サンプリング系(TSSなど)では、主にレガートの遅れを補正するために使われます
  • モデリング系では、演奏の連続性を保つための内部処理として機能します

これに対してNotePerformerでは、

  • フレーズの方向
  • 呼吸の位置
  • 声部の優先関係

といった音楽構造そのものを判断するために使われています。

つまり、「同じlookaheadでも、役割が全く異なる」と言えるでしょう。

制作における使い分け

実際の制作においては、それぞれの特性に応じた使い分けが重要になります。

例えば、

  • 楽譜の構造を把握したい → NotePerformer
  • リアルな弦のニュアンスを作り込みたい → SCES / SWAM
  • CCコントロール等の既存の制作フローで仕上げたい → MSS / TSS

といったように、目的によって適した音源は変わってきます。ですから、これらは優劣の問題ではなく、役割の違いと考えた方が分かりやすいでしょう。

まとめ

NotePerformerは、「演奏を作る音源」ではありません。

むしろ、「音楽を解釈する音源」と捉える方が、その本質に近いように思います。

この点において、NotePerformerは従来のストリング音源とは異なる位置にあると言えるでしょう。

次回は、この違いを踏まえた上で、NotePerformerの音の仕組みについてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

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