DTMでクラシック音楽

1.DTMの魅力
 さて、ピアノなりバイオリンなりそれぞれの楽器をそれなりに弾きこなすためには、小さな頃からそれはたゆまぬ努力が欠かせません。 その間、多くの方があきらめ、興味を失い楽器から去って行きます。

 そこでDTMです。 DTMというのは”DeskTop Music”の略称で、どうやら和製英語のようです。 コンピューターを使って楽曲を創ったり、音を出すことを総称してDTMといいますが、実に不思議な魅力があります。 不思議な魅力というのは、楽器が弾けなくてもDTMを通して自分特有の音楽創作活動に入れるということなんです。 作曲もできますし、演奏もできます。 インプットさえ間違えなければピアノの名曲もミスタッチなしで演奏できます。 それが音楽になっているかどうかは別ですが・・・。


2.DAWによるMIDI打ち込み
 例をピアノで説明しましょう。 実は、特有のソフト(DAW:Digital Audio Workstation)を使うことによって一つ一つの音符について、音の高さ、打鍵の強さ・次の音までの間隔・ペダルの踏み方等、細かなところまでピアノを弾くのと同じようなアクションをシミュレートできるのです。 それを「DAWによるMIDIの打ち込み」といいます。 つまりMIDI規格がベースになっております。

   参考:MIDI(Musical Instrument Digital Interfaceというのは音の様々な要素(楽器、高さ、強さ、長さ等々)を規格化しデジタル化したものです。 ですからオーディオデータとは違って数字などの羅列ですからPCで容易に処理できます。

 ちなみに、私は、”Cubase Pro”というDAWを使っております。 このDAWに組み込むピアノ音源によって発音がされます。(私の楽器達) ですから、楽譜のインプットさえちゃんとできれば、あたかも生ピアノで上手に弾いているような音出しができるんです。 ただし、楽譜に書かれている以上に音楽的にちゃんと解釈した上でインプットしなければ、なかなかいい演奏にはなりません。 つまり、きちんと楽譜の解釈をし、そこで出てくる条件を打ち込み技術で表現できるかどうかということにかかってきます。 そこが研究対象として面白いところです。 生ピアノはそれらを自分の体で具現化しているわけですね。

 普通リサイタルなどでピアノソナタなどを弾く場合、よほど弾き慣れている曲でなければ、曲全体の流れを考え、それに伴う一つ一つの音をどう鳴らすかという設計図を描いてゆくのでかなりの時間を掛けているはずです。 MIDIの打ち込みも全く同じで、私などは先生とのリモートレッスンを通して相当時間を掛けて仕上げるものが大部分です。

3.DAWに組み込む音源
 さて、ピアノ音源というのは、生のピアノを様々な条件で弾いた音をサンプリングしたオーディオデータです。 今、私が使っている音源は、ウイーンに本拠を置く”Vienna Symphonic Libraly”がだしている”Synchron Concert D-274“というものです。 スタインウエイ・ハンブルクで作られているコンサート用グランドピアノのフラグシップモデル”Steinway&Sons D-274″(2200万円以上はします)からサンプリングしたものです。 ライブラリーは120GBぐらいある、巨大なものです。 それぞれMIDIで打ち込まれた条件に合う音を、DAWがこのライブラリーから引っ張り出してきてつなぎ合わせ、連続的に鳴らすわけです。 ですから引っ張り出してきて、音を鳴らすまでの遅延時間を考えるとそれなりの技術やコンピューター性能が必要になるわけです。 実は、キーボードと接続してピアノとして演奏もできます。 これは電子ピアノそのものですね。

4.DTMの広がり
 さて、音源を色々変えればフルオーケストラでも、アフリカの民族音楽でも、三味線のような和楽器でも可能です。 問題はサンプリングの質に関わってきます。 今のところ、生に一番近いのはピアノのような減衰楽器だといわれております。 バイオリンなど弓で弾く弦楽器は一つの音の始めから終わりまで弾き手が音質をコントロールします。 そうなるとなかなか音作りが大変です。 DAWは特有な技術を使ってそれをシミュレートできるようになっておりますが、ピアノよりもかなり音作りが難しくなります。 AI技術がこの領域でも進んでくると、もっと楽に打ち込めるようになってくるかもしれませんね。
 ここでは触れませんが、作曲やライブ演奏の世界ではすでに多くの領域でこのような仕組みで音楽づくりをすることが普通の仕事になっております。 また、生楽器を録音しCD化するプロセスでも広く関連技術が使われております。 というよりも私のような音作りをしている方が少数派でしょうね。

5.DTMでクラシック音楽
 世の中、クラシック音楽のMIDIファイルはちょっとググれば沢山見つかります。 ない曲はないぐらいでしょうか。 でもDAWを使わず単に音符をMIDIに変換しただけのものが殆どで、多くが音楽を構成する様々な要素が考慮されておりません。 ですから、それこそクラシック音楽の演奏にはほど遠いものになります。 ここでは自分ならこう演奏したいと思う音作りをDAWを使ってじっくりとやってみたいと思っております。

 ただクラシック音楽が好きとはいえ、もともと音楽をまともに勉強したことのない私です。 それに退職後好きで始めたチェロもそろそろボケ防止の領域に入ってきております。 ただ、好きな曲を自分で演奏できたらなという単純なきっかけから始めたMIDIの打ち込みですが、ずっと続けているうちにこの世界に引き込まれてしまいました。 そして決め手は、ありがたいことに、元同僚のピアニストにクラウドベースでリモートレッスンをして頂けることになったことです。 この先生は毎年ベートーヴェンのピアノソナタとバッハを中心にリサイタルを開いております。 そのリサイタルのメインのピアノソナタを私も打ち込んでみることからレッスンを始めました。 当初、音楽力レベルの低さとMIDI打ち込みの技術不足でなかなか進みませんでしたが、厳しいご指導を頂きながら、このところに来てなんとか音楽らしくなってきたかなと・・・。

 さて自分の勉強のためにと調べてみたんですが、今ではクラシック音楽をDAWで打ち込んでいる例は思いの外少ないんですね。 YouTubeやSound Cloudに投稿されることはあるんですが、現在継続的に発信しておられるのは以下のサイトぐらいでしょうか。 海外では今のところみあたりませんでした。

              クラシック音楽打ち込み研究
              I-Dur Virtual Orchestra
              Windy softmedia service