少しずつ取り組んでいたベートーベンの弦楽四重奏曲15番の第三楽章がようやく仕上がりました。その間、今回新たに取り入れたVienna MIR 3Dというコンボリューションリバーブの扱い方などを試しながら進めていたのでずいぶんと時間が掛かりました。今まで使っていたリバーブとはかなりちがって、音がずいぶんと立体的に聞こえるようになりました。
さて、この15番第3楽章は誰しも納得させられる素晴らし四重奏ですね。ただ多くの人に静かな感動を与えるこの美しさには二つの背景があるんじゃないかなと思うんです。
この第3楽章には、ベートーヴェン自身が表題に”Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart” (リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌)と書いたことから分かるように、深刻な病で中断してしまったこの曲について何とか回復して作り上げることができた喜びと深い祈りが込められてたことは間違いないのでしょう。
ただ、この音楽を聴いていると、それだけではないようにも感じます。晩年のベートーヴェンの作品に共通する、外の世界ではなく、自分の内側へ深く降りていくような眼差しです。
若い頃のベートーヴェンには、社会や時代へ向かっていく強い意志があったように思います。しかし晩年、ヨーロッパはメッテルニヒ体制のもとにあり、かつて彼が抱いた自由や社会への期待とは大きく隔たった統制された社会になってしまったんですね。聴力の喪失や孤独、病といった個人的な事情とともに、こうした時代の変化も、彼の視線を次第に内面へ向かわせた背景の一つだったのかもしれません。
この楽章の静かなコラールを聴いていると、単なる病からの回復への感謝を超えて、自分の生そのものを静かに見つめているようにも聞こえてきます。今回の打ち込みでは、そんな響きを少しでも表現できればと思いました。
曲名:
Title:
String Quartet No. 15 in A Minor, Op. 132 – Third Movement
音源:
Sound Library:
Solo, Chamber & Ensemble Strings
Audio file format: mp3
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